須勢理毘売命
- 名前
- 須勢理毘賣命【古事記】(すせりびめのみこと)須勢理毘売命
- 須勢理毘賣【古事記】(すせりびめ)須勢理毘売
- 須世理毘売【古事記】(すせりびめ)
- 須勢理姬命【先代旧事本紀】(すせりひめのみこと)須勢理姫命
- 須勢理姬【先代旧事本紀】(すせりひめ)須勢理姫
- 須勢理姬神【先代旧事本紀】(すせりひめのかみ)須勢理姫神
- 性別
- 女神
- 父
須佐之男命 【古事記 上巻】
- 先祖
- 配偶者
大穴牟遅神 【古事記 上巻】
- 出来事
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大穴牟遅神が須佐之男命のもとにやって来ると、その女の須勢理毘売が出てきて、目を合わせると結婚した。中に戻ってその父に「とても素敵な神がお越しになりました」と言った。
その大神が出て見ると、「この者は葦原色許男というのだ」と言った。そして呼び入れて、蛇のいる室に寝させた。その妻の須勢理毘売命は蛇の領巾 をその夫に与えて、「その蛇が食いつこうとしたら、この領巾を三度振って打ち払いなさいませ」と言った。それで教えに従うと、蛇は自然と静かになったので、安眠して室を出た。
また翌日の夜には、呉公 と蜂の室に入った。また呉公と蜂の領巾を与えられ、先のように教えられて、安らかに出ることが出来た。
また鳴鏑を大野の中に射入れて、その矢を探させた。それでその野に入ったのを見て、ただちに火でその野を焼いた。出る所が分からずにいると、鼠がやって来て、「内はほらほら、外はすぶすぶ内は空っぽで、外はすぼんでいるという意味。」と言うので、そこを踏んで下に落ちてしまい、隠れ入っている間に火は焼け過ぎていった。そしてその鼠が鳴鏑を咥えて持ってきて渡した。その矢の羽は、その鼠の子供たちが全て食っていた。
妻の須世理毘売は、葬式の道具を持って泣きながらやって来た。父の大神は、既に死んでいると思って、その野に出で立った。しかしその矢を持ってきて渡すとき、家に入れて、広い大室に呼び入れて、頭の虱を取らせた。その頭を見ると、呉公 が多くいた。その妻は椋 の木の実と赤土を取って、夫に授けた。そえれでその木の実を嚙み砕き、赤土を口に含んで唾を出した。大神は呉公を喰いちぎって唾を出したと思い、心の中で可愛い奴だと思って寝た。
そこでその大神の髪を掴んで、その室の垂木ごとに結い著けて、五百引石 で室の戸を塞ぎ、妻の須世理毘売を背負って、その大神の生大刀 ・生弓矢 ・天詔琴 を持って逃げ出したとき、その天詔琴が木に触れて地が鳴動した。それで寝ていた大神は聞いて驚き、その室を引き倒した。しかし垂木に結ばれた髪を解いている間に、遠くに逃げた。
黄泉比良坂 まで追って来ると、遠くを眺めて大穴牟遅神に言うには、「そのお前が持っている生大刀・生弓矢で、お前の兄弟を坂の尾に追い伏せ、また河の瀬に追い払い、お前が大国主神となり、また宇都志国玉神となって、我が女 の須世理毘売を正妻として、宇迦山 の麓に宮柱を太く掘り立てて、高天原に届くほどに千木を高くして住め。この奴 め」と。それでその大刀と弓を持って八十神を追い払うとき、坂の尾ごとに追い伏せ、河の瀬ごとに追い払って、国作りを始めた。
先に大穴牟遅神と結婚の約束をしていた八上比売は、約束どおりに結婚した。それで八上比売も連れて来られたが、正妻の須世理毘売を恐れて、生んだ子を木の股に刺し挟んで帰った。
またその神の嫡后の須勢理毘売命は、とても嫉妬深かった。それでその夫神は悩み、出雲から
倭国 に上ろうとして、支度をして出立するとき、片手は馬の鞍にかけ、片足はその鐙に踏み入れて歌を詠んだ。「
奴 婆 多 麻 能 久 路 岐 美 祁 斯 遠 麻 都 夫 佐 爾 登 理 與 曾 比 淤 岐 都 登 理 牟 那 美 流 登 岐 波 多 多 藝 母 許 禮 婆 布 佐 波 受 幣 都 那 美 曾 邇 奴 岐 宇 弖 蘇 邇 杼 理 能 阿 遠 岐 美 祁 斯 遠 麻 都 夫 佐 邇 登 理 與 曾 比 於 岐 都 登 理 牟 那 美 流 登 岐 波 多 多 藝 母 許 母 布 佐 波 受 幣 都 那 美 曾 邇 奴 棄 宇 弖 夜 麻 賀 多 爾 麻 岐 斯 阿 多 泥 都 岐 曾 米 紀 賀 斯 流 邇 斯 米 許 呂 母 遠 麻 都 夫 佐 邇 登 理 與 曾 比 淤 岐 都 登 理 牟 那 美 流 登 岐 波 多 多 藝 母 許 斯 與 呂 志 伊 刀 古 夜 能 伊 毛 能 美 許 等 牟 良 登 理 能 和 賀 牟 禮 伊 那 婆 比 氣 登 理 能 和 賀 比 氣 伊 那 婆 那 迦 士 登 波 那 波 伊 布 登 母 夜 麻 登 能 比 登 母 登 須 須 岐 宇 那 加 夫 斯 那 賀 那 加 佐 麻 久 阿 佐 阿 米 能 疑 理 邇 多 多 牟 敍 和 加 久 佐 能 都 麻 能 美 許 登 許 登 能 加 多 理 碁 登 母 許 遠 婆 」そこでその后は、大御杯を取って近寄ると、捧げて歌を詠んだ。
「
夜 知 富 許 能 加 微 能 美 許 登 夜 阿 賀 淤 富 久 邇 奴 斯 那 許 曾 波 遠 邇 伊 麻 世 婆 宇 知 微 流 斯 麻 能 佐 岐 邪 岐 加 岐 微 流 伊 蘇 能 佐 岐 淤 知 受 和 加 久 佐 能 都 麻 母 多 勢 良 米 阿 波 母 與 賣 邇 斯 阿 禮 婆 那 遠 岐 弖 遠 波 那 志 那 遠 岐 弖 都 麻 波 那 斯 阿 夜 加 岐 能 布 波 夜 賀 斯 多 爾 牟 斯 夫 須 麻 爾 古 夜 賀 斯 多 爾 多 久 夫 須 麻 佐 夜 具 賀 斯 多 爾 阿 和 由 岐 能 和 加 夜 流 牟 泥 遠 多 久 豆 怒 能 斯 路 岐 多 陀 牟 岐 曾 陀 多 岐 多 多 岐 麻 那 賀 理 麻 多 麻 傳 多 麻 傳 佐 斯 麻 岐 毛 毛 那 賀 邇 伊 遠 斯 那 世 登 與 美 岐 多 弖 麻 都 良 世 」このように歌って酒杯を交わし、互いに首に腕をかけて、今でも仲睦まじく鎮座している。これを
【古事記 上巻】神語 というのである。
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