住吉仲皇子の近習に隼人があった。刺領巾という。
瑞歯別皇子は密かに刺領巾を呼び、誘って「私の為に皇子を殺してくれ。私は必ずお前に厚く報いよう」と言うと、錦の衣・褌を脱いで与えた。
刺領巾はその言葉を恃んで、独り矛をとり、仲皇子が厠に入るのを伺って刺し殺した。そして瑞歯別皇子に従った。
木菟宿禰が瑞歯別皇子に言うには「刺領巾は人の為に自分の君を殺しました。それは我々の為には大功ではありますが、自分の君には慈悲が無いこと甚だしい。どうして生かしておけましょう」と。
そして刺領巾を殺した。
【日本書紀 巻第十二 履中天皇即位前紀 仁徳天皇八十七年正月条】